2023.08.15

祖父の遺品を私がお預かりすることになったのは4年前。

その中には、戦時中、祖父が、祖母や曽祖父に宛てて達筆な葉書が多数含まれていました。

36歳という若さで亡くなった祖父の顔を直接見たことのない私としては、その文面から、祖父の人柄や家族の様子、そして当時の日本の様子が伝わって、心に深く感じるものがありました。

そうした遺品の中で、特に心に強く迫ったものが、陸軍大尉 杉山さんからのお手紙でした。杉山さんは祖父の上官だったそうです。日付は、『昭和二十年八月十五日』とありました。

均整のとれた美しい文字が並ぶそのお手紙には、祖父が戦死した時の状況、そして、部下である祖父を失ったことに対する慚愧の想いが綴られていました。また、お詫びして済むことではないけれどもと前置きされた上で、敗戦した日本の再建に邁進することで亡き部下の霊に応えたいという願いも綴られていました。

祖父は無線通信手として、長崎での任務につき、浦上駅前の路上にて、原爆で亡くなったそうです。即死だったと書かれていました。

そのお手紙を読み「祖父はどのような願いと後悔を持ってあの世に帰っただろうか。今の日本や私たち子孫をどのように見ているだろうか。そして、杉山さんはその後の人生をどのように生きられただろうか…」と思わずにいられませんでした。

そして、今の日本があることに、その陰には杉山さんのような多くの方々の多大なるご苦労と努力があったことに、感謝の気持ちでいっぱいになりました。私もしっかりと自分の責任と使命を心に刻み、努力を重ね、ご恩に報いたいと思いました。