『2つの扉』を読んで Vol.6

2022.02.03

感染症の拡大が結果的に時代・社会の文明史的な転換点になってきたことはよく知られていることですが、中国 武漢からはじまった今回のコロナウィルスの世界的な感染拡大も、既に人と人のつながりのあり方を大きく変え、医療や経済の分野のみならず、世界全体の大きな転換点になろうとしていることを感じます。

そのような転換点において大切なテーマは何かと考えると、やはり、「次の時代の精神的な基軸とはどうあるべきか」ということではないかと思います。特に日本は、長引く経済の停滞、自殺者数の増加、国民の幸福感の低迷といった大きな困惑をいくつも抱えています。だからこそ、その精神的な基軸は、私達を過去思考から解き放ち、難局を突破させる力と智慧を備えたものであることが必須の要件であると感じます。

このような高度な要請に対して「2つの扉『まさかの時代』を生きる究極の選択 (三宝出版)」は、まさに時宜を得た発刊であり、多くの方々にぜひご一読をおすすめしたいと思う一冊です。

著者の高橋佳子氏は、読者に向けて「あなたは、2つの扉のどちらを選びますか」と問いかけます。左の扉は唯物主義で、すべては偶然・たまたまであり、死んだら全て終わりという、ニヒリズムにつながる人間観・世界観です。右側の扉は、人間の本質は魂であり、すべての出会いや出来事には一人ひとりが成長し、その願いを果たすための必然があると受け止める人間観・世界観です。

本書を読むと、この2つの扉のどちらを選ぶか、その選択は単なる信条や価値観の決定といった精神論の範疇を超え、目の前の現実をどのように受け止め、どのような意味を見出し、どのような言動を選択し、どのような現実を生み出すか、という全てに関わることであり、極めてパワフルで、現実的な選択であることが理解できます。

右側の扉を開くことを出発点として、その選択の先にこの現実世界をどう生きてゆけばよいのか。本書には、そのための7つの智慧と、その智慧を生きたモデルとしての実践者の方々が紹介されており、その一つ一つから勇気と希望が感じられ、これこそ、次の時代の精神的な基軸となる叡智であるとを感じずにはおれませんでした。